韓国の姦通罪とは?!

韓国には日本と違い、結婚している男女が配偶者以外の異性と不貞な関係を持つと,所謂『不倫』をする2年以下の懲役の罪に問われると言う『 姦通罪 』 と言う法律がつい最近までありました。
実はこの法律、今ではほとんど知られてはいませんが、元々日本にあった法律で、戦時中に韓国が日本の植民地時代、日本の支配下にあった韓国でも導入された法律です。
ちなみに日本では、戦後に作られた日本国憲法に男女平等が定められたことに伴い、1947年に廃止されています。
但し、韓国ではこの姦通罪、 戦前は夫にだけ訴える権利があり、男女平等で日本では廃止になったのとは異なり、 韓国では夫だけでなく妻にも訴える権利があるべきと言う形で男女平等を掲げその後、約70年間続くこととなります。
韓国では夫の浮気を法的に訴えて離婚することが出来ると言う理由から、支持する女性も多く、90年以降に熟年離婚が急増した背景にもなりました。
最近になり、その姦通罪が韓国でも廃止され、韓国において近年、社会と法制度の大きな変革が進行しており、その中でも姦通罪の廃止は、歴史的な出来事として注目されています。
本記事では、まず韓国における姦通罪の内容と歴史的背景、その廃止に至るまでの経緯をお話しする様に致します。
続いて、姦通罪の廃止がもたらした法的・社会的な影響を考察し、その結果として起こった文化的変化やメディア、パブリックの反応についても分析します。
姦通罪とはどういうものか?
それでは姦通罪という法律がどの様なものなのか詳しく見てみましょう!
1)同一の相手と3回以上の性交渉をした場合のみ訴えることが出来る。
2)愛撫するだけの関係の場合は訴えることが出来ず、挿入をしたと言う証拠がないと訴えることが出来ない。
3)不貞な関係を持った者の相手にも配偶者がいる場合は二重姦通罪が認められる。
4)離婚した場合は訴えを取り消すことが出来る
この姦通罪、2番を見て頂くと分かるように、挿入したと言う証拠がないと訴えることが出来ず、過去にアメリカのビル・クリントン大統領の迷台詞と言える『オーラルセックス(フェラチオ)はしたが、挿入はしていない』と言う場合は訴えることすら出来ないのが実情。
そのため、男女がラブホテルに二人きりでいたと言う事実たけでは成立せず、挿入をしたと言う証拠がなくてはならないため、妻が夫の浮気現場に行ってコンドームを探しだして、使用済みのコンドームを証拠物として出すか、コンドームを使ってない場合は、行為の最中をそのまま現行犯で捕まえるか、行為の映像を撮って提出しなくてはならないため、立証させるのが非常に困難で、訴えを起こそうとしても起こせない場合が多かったと言われています。
姦通罪廃止がもたらした影響
韓国において長年続いた姦通罪が廃止されたことは、社会に様々な影響をもたらしました。これは単なる法的な変化にとどまらず、社会全般において多様な影響を及ぼしたと考えられます。
法的影響とその結果
姦通罪の廃止は、韓国の法体系において重要な転換点を意味しました。まず、個人のプライバシーと自由が尊重されるべきだという現代的な人権意識が強く反映され、これにより、個人の性的活動に対する国家の介入が制限されることとなり、法律が人々の個人的な生活に過度に干渉すべきではないとの司法判断が確立されました。
さらに、これは性差別的な法規制からの解放を意味し、特に女性の権利向上に寄与する側面が強調されました。この法的な変化により、離婚や不倫に関連する法的紛争においても新たな判断基準が生まれ、家族法の改定に波及する重要な影響を及ぼしました。
かつては女性を守るために姦通罪が必要だった?
「不倫をされて辛い思いをする人たちはたくさんいたが、1990年代までは、泣き寝入りせずに多額の慰謝料を取るためにも姦通罪は必要悪という考えがあった」という。
当時は働く女性は低所得層が多く、離婚したら生活できないという事情もあった。また、韓国は道徳性を常に意識する社会であり、特に保守層の男性には「性道徳を守れ」という意識も強かった。だが、「男性中心で女性だけに純潔を求めるのはおかしい」という意識もあり、逆に女性からも訴えることができる姦通罪は必要だという意識もあったようだ。
姦通罪の第1号は?
1954年に韓国で活躍した有名女優チェウニさん。18歳の時に結婚した夫にDVをされ、不和が続く中、釜山で映画の撮影中に倒れ、その彼女を背負って病院まで運び面倒を見てくれたシン監督と恋に落ちたのがきっかけで、2人はソウル市内の安旅館で2人だけの結婚式を挙げる。これに対して前夫がチェウニを姦通罪で告訴しました。それにより、チェウニは戦後の姦通罪1号となりました。
その後、シン監督と離婚することになりますが、北朝鮮の金正日に北朝鮮映画を発展させると言う理由で別々の時期に拉致され、北朝鮮で最高の待遇を受けて、5本の映画を撮影しました。
そのうちの一つである映画『塩』は1985年にモスクワ国際映画祭で、映画の制作国は北朝鮮となりますが、韓国人女優初の国際映画祭主演女優賞を受賞することになります。
その後、ベルリン国際映画祭からの招待でウィーンに行った二人は、ウィーンにあるアメリカ大使館の前で車を飛び降りてアメリカに亡命し、アメリカで再婚したとのことです。
姦通罪で訴えられた芸能人。
韓国はこれまで、芸能人などの著名人が姦通罪で訴えられ、そのたびに姦通罪の是非が議論になったことがある。1970年代から80年代にかけて、ロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)で活躍した往年のプロ野球選手である白仁天(はく・じんてん、ペク・インチョン)選手が1983年、韓国プロ野球球団の監督在任時に姦通罪で逮捕され、これは日本でも話題になった。
2008年には、有名女優だったオク・ソリ氏が夫から姦通罪で訴えられた。訴えられたオク氏は逆に「姦通罪は違憲」との訴えを出したが、当時は認められなかった。最近でも人気タレントやテレビキャスターなどの有名人が、姦通罪で訴えたり訴えられています。
姦通罪廃止。
韓国の憲法裁判所は2015年2月26日、姦通罪を違憲とする判断を出した。韓国での姦通罪は刑法241条に規定され、罪が認められれば懲役2年以下の懲役となった。今回、「姦通を法律で処罰することは、国民の基本権を侵害する」として、憲法裁判所の裁判官9人のうち7人が「違憲」と判断した。
この判断で姦通罪の効力は喪失し、また、2008年10月31日以降にまで遡及して効力が発生する。韓国では、これにより姦通罪で起訴された3,000人ほどが再審を請求するものと推定され、すでに有罪とされた者のうち少なくとも110人程度が刑事補償を求める可能性があるとしている。
62年間続いた「姦通罪は」こうして幕を閉じました。
世界の姦通罪事情。
アジアでは北朝鮮とフィリピンにはまだ姦通罪が存在しており、中国に関しては軍人に限り姦通罪が適用されるとのことです。また、台湾にも姦通罪がありましたが、2020年5月29日に廃止となりました。
イスラム国家では未だに姦通罪が根強く残っており、エジプト、サウジアラビア、アルジェリア、UAE、カタール、スーダン、ヨルダン、マレーシア、インドネシア等、ほぼ全てのイスラム国家では姦通罪を重犯罪として規定しており、特に女性がそれを犯した場合は懲役刑、死刑、もしくは私的制裁を行わる場合もあるとのことです。
また、アメリカにも州によっては姦通罪が存在しますが、起訴されることがほとんど無いため、存在感自体が無いと言えます。